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白氏文集卷十七 潯陽春 三首之一 元和十二年作 春生2010年02月04日

(しやう)ず   白居易

春生何處闇周遊  春(しやう)じて (いづ)れの(ところ)にか(あん)に周遊する
海角天涯遍始休  海角(かいかく) 天涯(てんがい) (あまね)くして始めて(きう)
先遣和風報消息  ()和風(くわふう)をして 消息(せうそく)(はう)ぜしむ
續教啼鳥説來由  ()いで啼鳥(ていてう)をして来由(らいいう)()かしむ
展張草色長河畔  草色(さうしよく)展張(てんちやう)長河(ちやうか)(ほとり)
點綴花房小樹頭  花房(くわばう)点綴(てんてい)小樹(せうじゆ)(いただき)
若到故園應覓我  ()故園(こゑん)に到らば (まさ)に我を(もと)むべし
爲傳淪落在江州  為に伝へよ 淪落(りんらく)して江州(かうしう)()りと

【通釈】春は発生してから、どこを秘かに周遊するのか。
海の果て、天の果てまであまねく行き渡って、初めて歩みを止める。
さてまずは穏やかな風によって春の到来を告げさせ、
次いで鳴く鳥に春の由って来たる所以を語らせる。
大河のほとりには草の緑を敷き広げ、
小さな樹々の梢には花の房を点々と添える。
春よ、もし故郷に至ったら、我が家も訪ねることだろう。
私の代りに伝えてくれ、私が今江州に落ちぶれていると。

【語釈】潯陽(じんやう) 現在の江西省九江市に潯陽県がある。◇海角 海の辺隅。◇故園 故郷。白居易の家族が住んだ渭北の地を指す。江州の北にあたり、春の訪れは遅い。◇江州 江西省と湖北省南部にまたがる地域の古称。

【補記】江州の司馬に左遷されていた元和十二年(817)、四十六歳の作。「潯陽春」の総題のもと「春生」「春来」「春去」と三首連作したうちの第一首。第三・四句「先遣和風報消息 續教啼鳥説來由」が『和漢朗詠集』巻上「早春」の部に引かれる。『千載佳句』にも第三・四句、また第五・六句「展張草色長河畔 點綴花房小樹頭」が引かれている。下記後撰集の歌(『新撰万葉集』にも見える)は第三句と第六句を繋ぎ合せたような趣である。

【影響を受けた和歌の例】
吹く風や春たちきぬと告げつらむ枝にこもれる花咲きにけり(よみ人しらず『後撰集』)