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白氏文集巻二十八 府西池2010年02月06日

府西の池  白居易

柳無氣力條先動  柳に気力なくして (えだ)()づ動く
池有波文氷盡開  池に波の(もん)ありて 氷(ことごと)(ひら)けたり
今日不知誰計會  今日(こんにち) 知らず 誰か計会(けいくわい)せし
春風春水一時來  春風(しゆんぷう)春水(しゆんすい)一時(いつとき)(きた)

【通釈】柳はぐったりとして、暖かい風に真っ先に枝が動く。
池の氷はすっかり解けて、水面に波紋が描かれる。
今日、いったい誰が計らい合わせたのか。
春の風と春の水とが、同時にやって来た。

【語釈】◇計会 計画。計らい合せる。

【補記】題の「府西池」の「府」とは白居易の任地河南府。白居易が河南尹に叙せられたのは太和四年(830)、五十九歳のこと。以後太和七年四月までを同地に過ごした。『和漢朗詠集』巻上「立春」の部に第一・二句が引用されている。

【影響を受けた和歌の例】
水のおもにあや吹きみだる春風や池の氷をけふはとくらむ(紀友則『古今集』)
袖ひちし池の氷もうちとけてみどりのあやは波ぞたちける(大江匡房『江帥集』)
春風やとくる氷のぬきをうすみあやなくみだす池のさざ波(宗良親王『宗良親王千首』)
浪のあやを氷の下にたたみ置きて声さむげなる池の水鳥(正広『松下集』)
とけわたる池の氷の波のあやに色もめづらし鴛の毛衣(中院通村『後十輪院内府集』)
氷とけし池のおもてに小車のあや織りみだり春雨ぞふる(香川景樹『桂園一枝』)