白氏文集卷十六 階下蓮 ― 2010年06月28日
葉展影翻當砌月 葉
花開香散入簾風 花
不如種在天池上
猶勝生於野水中
【通釈】蓮の葉が伸びて、汀の石に射す月光の下、その影がひるがえっている。
蓮の花が咲いて、簾へと吹き入る風の中、その香がまき散らされる。
天上の池に植えておくに如くはないが、
かと言って野中の泥水に生えるのよりはましだ。
【語釈】◇砌 池の岸などに石を敷いた所。石畳。◇天池 天上の池。◇野水 野中にある沼などを言う。
【補記】江州司馬に左遷されていた頃の作。自身を階下の蓮になぞらえ、「天池」に長安の都を、「野水」に左遷の地江州を暗に喩えたとみる説がある。和漢朗詠集巻上夏の「蓮」の部に初二句を採る。肥後の歌を始め「花入簾」「落花入簾」等の題で詠まれた歌は、おそらく掲出詩の第二句の影響を受けていると思われる(但し和歌では「花」は桜を指すことになる)。
【影響を受けた和歌の例】
玉簾ふきまふ風のたよりにも花のしとねを閨にしきける(肥後『肥後集』)
明け方は池の蓮もひらくれば玉のすだれに風かをるなり(藤原俊成『長秋詠藻』)
軒近き花橘の風ふれてすだれの内も香に匂ふなり(冷泉為村『為村集』)
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://yamatouta.asablo.jp/blog/2010/06/28/5189593/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
最近のコメント