和漢朗詠集卷上 七夕より三首 ― 2010年08月07日
二星適逢 二星たまたま逢へり
未叙別緒依依之恨 未だ別緒 依々 の恨みを叙 べざるに
五更將明五更 まさに明けむとす
頻驚涼風颯颯之聲頻 りに涼風颯颯 の声に驚く
【通釈】牽牛・織女の二星は稀に逢うことができたのに、
まだ惜別未練の恨みごとも言い終わらないうちに、
もうじき夜が明けようとしている。
涼しい風がささと吹き、その度に二星は驚く。
【影響を受けた和歌の例】
たまさかに秋の一夜を待ちえても明くるほどなき星合の空(藤原隆房『新勅撰集』)
待ちえても星合の夜は秋の風うらみもあへじ天の羽衣(藤原為家『為家集』)
風從昨夜聲彌怨 風は昨夜より声
弥 怨む
露及明朝涙不禁 露は明朝 に及びて涙禁ぜず
【通釈】風は昨夜から吹きつのり、ますます恨みの声を高くする。
露は明くる朝しとどに置き、二星は涙をおさえられない。
【影響を受けた和歌の例】
暁の露は涙もとどまらでうらむる風の声ぞのこれる(相模『新古今集』)
明日かとも契りもおかぬたをやめの袖ふく風のこゑぞ恨むる(藤原家隆『壬二集』)
去衣曳浪霞應濕
去衣 浪に曳 きて霞 湿 ふべし
行燭浸流月欲消行燭 流れに浸 りて月消えなむとす
【通釈】天の川に立ち込める霞は織女の去りゆく衣か。天の川の波に裾を引いて、湿っているに違いない。
月影は織女の道行きを照らす燭か。川の流れに浸かって、光はまさに消えようとしている。
【語釈】◇去衣 後朝に着て帰る衣服か。
【影響を受けた和歌の例】
程もなくたちやかへらむたなばたの霞の衣なみにひかれて(相模『相模集』)
今はとてかへる
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