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千人万首 三条西実隆2014年06月21日

不逢恋 春日社法楽内

えにしありて思ひやそめしとばかりに慰めてのみ待つ契りかな(雪玉集1874)

「前世からの因縁があって恋し始めたのだろうかと、そう思うことばかりに慰めを見出して、あの人と契りを交わす日を待つことよ」。

「逢ハヌ恋」、まだ一度も逢瀬を遂げていない恋の心を詠む。現世の恋は前世からの因縁に拠り、それが成就するか否かも前世によって既に定められていると考えられた。自分が特定の人を恋したということは、それなりの因縁があるはずだから、そのことに期待をかけようとの心である。

春日社に奉納した和歌、制作年未詳。

恋についての当時の常識的な考え方を歌にしたばかりと言えば言えようが、句切れなく曲折を尽くし、因縁にすがる心情に切なるものが感じられる。

逢恋 文明十三十二廿点取

なほざりに思ふなよ夢逢ひみるは一よふた夜の契りならじを(雪玉集1882)

「逢瀬は夢と言っても、その夢を決していい加減に思いなさるな。二人の契りは一夜二夜ばかりの儚いものではありますまいに」。

初二句は「夢をなほざりに思ふなよ」で、恋人への呼びかけと読んだ。「思ふなよ夢」は「思ふなよゆめ」に懸けているのであろう。初めて遂げた逢い引きの後、情事をはかない夢にたぐえることに抗い、契りの深さを恋人に、そして自らに言い聞かせようとするかのようである。文明十三年(1481)十二月の作。

不憑恋

たれにまたうつし心のひとさかり見えてかなしき月草の色(雪玉集6948)

「あの人は誰にまた心を移すことか。一時だけの盛りが見えて切ない月草の色よ」。

タノマヌ恋」。深い仲にはなったが、相手は恋の噂の絶えない人。一途に期待はすまいと自制する気持を月草の儚い色に託して詠んでいる。

「うつし心」は「移し心」で、変わりやすい心のこと。「うつし」は写し染めに用いた「月草」の縁語。「月草」は露草の古名。「月草に衣は摺らむ朝露に濡れてののちはうつろひぬとも」(巻七・一三五一、作者未詳)などに見られるように、その美しい青色は染色に用いられたが、色は褪せやすいので、人の心のうつろいやすさの象徴とされてしまったのである。

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