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佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』東海道線16 大津~堅田2015年02月27日

琵琶湖

大津

琵琶湖南端の都会。

作者不詳

逢坂を打出て見れば近江の海白木綿しらゆふ花に浪立ち渡る

大隈言道

うひに来て大津の大路今日見ればよくも牛には生れざりけり

橘曙覧

雨降ればひぢ踏みなづむ大津道われに馬あり召さね旅人

大津宮址

大津駅附近の地。

高市黒人

さざ浪の国つ御神のうらさびて荒れたる都見れば悲しも

古への人にわれあれやさざ浪の古き都を見れば悲しき

平忠度

さゞなみや志賀の都はあれにしを昔ながらの山ざくらかな

大田垣蓮月

志賀山やはなの白雪はら〳〵と古きみやこの春ぞくれゆく

長良山

大津市背後の山。

大中臣能宣

さゞ浪の長良の山のながらへて楽しかるべき君が御代かな

藤原公重

こえやらであかずこそ見れ春の日の長らの山の花の下道

三井寺

長良山の山腹にあり。

定円

さゞ浪や三井の古寺鐘はあれど昔にかへる声はきこえず

梅川春晶子

三井寺は杉の若葉に埋もれて雲より落つる夕暮の鐘

琵琶湖

柿本人麿

近江のゆふ浪千鳥が鳴けば心もしぬにいにしへおもほゆ

高市黒人

いその崎漕ぎみゆけば近江のうみ八十やその港にたづさはになく

藤原家隆

にほの海や月の光のうつろへば波の花にも秋は見えけり

藤原師賢

おもふことなくてぞ見ましほの〴〵と有明の月の志賀の浦浪

賀茂真淵

さゞ浪の比良の大わだ秋たけてよどめる淀に月ぞすみける

加納諸平

近江の海湊八十あり何しかも思ひとまらで雁のゆくらむ

唐崎

大津より二里。琵琶湖の西岸にあり。老松あり。

柿本人麿

さゞなみの滋賀の唐崎さきくあれど大宮人の船待ちかねつ

藤原顕家

月かげは消えぬ氷と見えながらさざ浪よする志賀の唐崎

大江匡房

氷りゐし志賀のから崎打とけてさゞ浪よする春風ぞふく

千種有功

ふく風の色は梢にくれそめて雨になりゆく唐崎のまつ

高畠式部

尋ねきてあはれとぞ見る幾千年ひとりか経けん志賀の浦松

尾見総子

唐崎の月夜を訪ひて坂本に帰る二人をふく秋のかぜ

堅田

唐崎より北二里。浮御堂あり。

中村竹洞

秋風に落ちくる雁の声寒し堅田の浦のゆふぐれの空

補録

大津

穂積老

我が命のまさきくあらばまたも見む志賀の大津に寄する白波

大津宮址

伝柿本人麿

さざなみや近江の宮は名のみして霞たなびき宮木守みやぎもりなし

藤原忠通

さざなみや国つ御神みかみのうらさえて古き都に月ひとりすむ

長良山

源順

名をきけば昔ながらの山なれどしぐるる秋は色まさりけり

後鳥羽院下野

桜咲くながらの山のながき日も昔を恋ひぬ時のまぞなき

常縁

世はなにとうつろひかはるふるさとの昔ながらの夕ぐれの花

三井寺

三井寺焼けて後、住み侍りける坊を思ひやりてよめる

行尊

すみなれし我が古郷はこの頃や浅茅がはらに鶉なくらむ

琵琶湖

式子内親王

にほの海や霞のをちにこぐ舟のまほにも春のけしきなるかな

藤原家隆

志賀の浦や遠ざかりゆく波間より氷りて出づる有明の月

俊成卿女

にほのうみ春はかすみの志賀の波花に吹きなす比良の山風

十市遠忠

大比叡やかたぶく月の木の間より海なかばある影をしぞ思ふ

上田秋成

ねざむれば比良の高嶺に月落ちて残る夜くらし志賀の海づら

唐崎

舍人吉年

やすみしし我ご大君の大御船おほみふね待ちか恋ふらむ志賀の唐崎

藤原忠通

さざなみや志賀の唐崎風さえて比良ひらの高嶺に霰ふるなり

宜秋門院丹後

夜もすがら浦こぐ舟は跡もなし月ぞのこれる志賀の辛崎

慈道親王

唐崎の松をもこえてにほの海やみぎはにたかき雪のさざ波

心敬

から崎や夕なみ千鳥ひとつ立つ洲崎の松も友なしにして

田安宗武

さざなみの比良の山べに花咲けば堅田にむれし雁かへるなり

比良山

平兼盛

見わたせば比良の高嶺に雪きえて若菜つむべく野はなりにけり

宮内卿

花さそふ比良の山風吹きにけり漕ぎゆく舟のあと見ゆるまで

香川景樹

大比叡やをひえのおくのさざなみの比良の高嶺ぞ霞みそめたる

堅田

大田垣蓮月

すずみ舟よする堅田の浦風に月もゆらるる波の上かな

(東海道線の部おわり)

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