佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』四国11 沙弥島(狭岑島) ― 2016年12月06日
瀬戸大橋と沙弥島
補録
沙弥島
香川県坂出市。万葉集に「狭岑の島」と詠まれている。かつては島であったが、埋め立てにより現在は陸続きとなっている。JR坂出駅からバス便がある。
讃岐の狭岑の島にして、石の中の死人を見て、柿本朝臣人麻呂の作る歌一首 并せて短歌
玉藻よし 讃岐の国は 国からか 見れども飽かぬ 神からか ここだ貴き 天地 日月とともに 満り行かむ 神の御面と 継ぎ来たる 那珂の港ゆ 船浮けて 我が榜ぎ来れば 時つ風 雲居に吹くに 沖見れば とゐ波立ち 辺見れば 白波騒く いさなとり 海を畏み 行く船の 梶引き折りて をちこちの 島は多けど 名ぐはし 狭岑の島の 荒磯面に 廬りて見れば 波の音の 繁き浜辺を 敷栲の 枕になして 荒床に 自臥す君が 家知らば 行きても告げむ 妻知らば 来も問はましを 玉鉾の 道だに知らず おほほしく 待ちか恋ふらむ 愛しき妻らは
反歌二首
妻もあらば摘みて食げまし沙弥の山野の上のうはぎ過ぎにけらずや
沖つ波来寄る荒磯を敷栲の枕とまきて寝せる君かも
浪の上に平たく見ゆる砂弥島はそのいにしへに人は愛しみき
砂弥島の荒磯の石に漕ぎ寄せて吾ひとりなる心やすらふ
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