白氏文集卷十三 晩秋閑居 ― 2009年10月09日
晩秋の閑居 白居易
地僻門深少送迎 地は僻り 門は深くして 送迎少に
披衣閑坐養幽情 衣を披て閑坐し 幽情を養ふ
秋庭不掃攜藤杖 秋の庭は掃はず 藤杖に攜りて
閑蹋梧桐黄葉行 閑かに梧桐の黄葉を蹋んで行く
【通釈】わが家は僻地にあり、門は通りから引っ込んでいるので、客人の送り迎えもなく、
上衣を引っ掛けのんびり座ったまま、静かな心をはぐくむ。
秋の庭は掃除せず、藤の杖をひいて
ゆっくりと梧桐の黄葉した落葉を踏んで歩く。
【語釈】◇少送迎 「少」は否定の意であろう。◇梧桐 青桐。アオギリ科の落葉高木。葉は大きく、秋に黄葉する。
【補記】和漢朗詠集に第三・四句が引用されている。
【影響を受けた和歌の例】
桐の葉もふみわけがたくなりにけり必ず人を待つとなけれど(式子内親王『新古今集』)
人は来ず掃はぬ庭の桐の葉におとなふ雨の音のさびしさ(源通具『万代集』)
踏みわけて誰かとふべきふるさとの桐の葉ふかき庭の通ひ路(飛鳥井雅有『雅有集』)
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