和歌歳時記:福寿草 Pheasant's eye2010年01月04日

福寿草 鎌倉市二階堂にて

キンポウゲ科の多年草。福づく草、元日草、さちぐさとも。ちやうど旧暦正月頃に開花するので、縁起の良い花として新年の床飾りに用ゐられるやうになつたのは、江戸時代のことである。陽暦の今も正月の花として好まれ続け、歳末初春の市で鉢植が売買される。

今滋(いましげ)が近きわたりなる友どちの(もと)に行きける帰るさ、福寿艸(ふくじゆさう)の有りけるを買ひて、おのれに家づとにせむとてもてかへり、机上(きじやう)にすゑて、これ見給へといひける時

正月(むつき)立つすなはち華のさきはひを受けて今歳(ことし)も笑ひあふ宿

幕末の歌人(たちばなの)曙覧(あけみ)の『志濃夫廼舎(しのぶのや)歌集』に見える歌。「正月になる、するとすぐ花の祝福を受けて、今年も皆で笑ひ合つてゐる家」。詞書の「今滋」は曙覧の長男。彼が友達の家に遊びに行つた帰り、みやげに福寿草を買つて帰り、その花を見て曙覧が詠んだといふ。福寿草の花は極めて丈が低く、土に貼りつくやうに咲く。小鉢の中に身を寄せ合ふすがたは、あたかも小さな家の中で顔を寄せ合ひ笑ひ合ふ家族のやうだ。

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  『霞関集』(かしこより金山の福寿草を押花にして添へてつかはす歌) 石野広通
これぞこの黄金の山に咲きそひてその色見する花の春草

  『鈴屋集』(福寿草といふもの書きたるに) 本居宣長
人みなのいはふ名おひてあらたまの年のはじめに咲くやこの花

  『蜀山人家集』(福寿草の画讃) 大田南畝
元日の草としきけば春風のふくと寿命の花をこそもて

  『草径集』(元日草) 大隈言道
うれしくも年の始めのけふの日の名におひいでてさくやこの花

  『白桃』  斎藤茂吉
福寿草(さちぐさ)を縁の光に置かしめてわが見つるとき心は和ぎぬ

  『晴陰集』  吉野秀雄
朝にほふ緋氈の上に福寿草(さちぐさ)(ふふ)める鉢を移し置きけり

コメント

_ 青嵐 ― 2012年01月03日 07時47分

あけましておめでとうございます。どんな闇も明けない夜はないと申しますが、今年ほど、新しい年が明けた喜びをしみじみと味わう2012年元旦はなかったのではないでしょうか。
 私、お店を開店している時はほぼ毎日、ブログを開催しているものでございます。毎日の誕生日の花とその時々の歌を新聞配達をしていたころ聞いていた、ラジオ深夜便の心の時代の鳥海明子さんの誕生日の花と短歌から使わせていただいていたのですが、毎年同じものでもなあ、と思い、講談社のフルールに載っていた誕生日の花366日から「今日の誕生日の花と花言葉」を使わせてもらうことにしました。そこでハタと困ったのがうたです。福寿草のうたとして検索してみたところ、水垣久さんのブログが検索されて出てきました。この中の斎藤茂吉さんの歌を使わせていただきたいと思います。よろしくお願いします。パソコンは全く素人なのでURLの意味がちょっとわからないのですが、ブログのことかな?と思いブログのアドレスを入れました。

_ 水垣 ― 2012年01月03日 11時19分

あけましておめでとうございます。今年の年明けは本当に感慨ひとしおでした。
斎藤茂吉の福寿草の歌をお使いとのこと、こうした形でお役に立てるとは思っておりませんでした。
URLの記載もありがとうございます。お名前の「青嵐」さんをクリックすると、貴ブログへ飛べるはずなのですが、なぜか「指定されたブログが見つかりません」になってしまいますね。URLにどこか誤りがあるのではないかと思うのですが、如何でしょう。

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