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和漢朗詠集卷上 氷2010年01月12日

失題   相如(しやうじよ)

霜妨鶴唳寒無露  霜鶴唳(かくれい)(さまた)げて 寒うして露なし
水結狐疑薄有氷  水狐疑(こぎ)を結んで 薄くして氷あり

【通釈】この寒さに露は残らず霜となり、鶴の声も震えている。
水面はうっすらと氷が張って、狐はためらいつつ川を渡る。

【語釈】◇妨鶴唳 鶴の鳴き声を妨げる。霜が置くほどの厳しい寒さが、鶴の鳴くことを邪魔するのである。◇結狐疑 狐に疑いをもたらす。「狐疑」は疑いためらうこと。狐は疑り深い動物とされ、氷の下に水音のないことを確かめてから渡るという言い伝えがある。

【作者】相如(しょうじょ)こと高岳(たかおかの)相如(すけゆき)は生没年・伝未詳。和漢朗詠集に多くの詩句が採られたのは、彼が藤原公任の師であったからという(江談抄)。拾遺集に和歌一首を採られている。

【補記】出典は不詳。「霜妨鶴唳寒無露」を踏まえたかと思われる和歌が古くから散見される。『土御門院御集』の歌は、この句を題として詠んだもの。

【影響を受けた和歌の例】
さ夜ふけて声さへさむき蘆鶴(あしたづ)はいくへの霜かおきまさるらむ(藤原道信『新古今集』)
霜ふかき沢辺の蘆に鳴くつるの声もうらむる明暮の空(藤原定家『拾遺愚草』)
おく露のむすべばしろき霜のうへに夜ふかきつるの声ぞさむけき(土御門院『土御門院御集』)
冬の夜に声さへさむき葦鶴のなくねも霜やおきまよふらむ(藤原秀能『如願法師集』)
冬枯れの網代のたづも声たえぬ野沢の水のこほる霜夜に(藤原内経『文保百首』)

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