和漢朗詠集卷上 落花 ― 2010年04月18日
惜残春(抄)
残春を惜しむ(抄) 大江朝綱
落花狼藉風狂後
啼鳥龍鐘雨打時
【通釈】風が荒れ狂ったあと、花は激しく散り乱れる。
雨が叩きつけるように降る中、鶯はしょんぼりとした声で啼く。
【語釈】◇龍鐘 龍鍾に同じ。老いて疲れる。うらぶれる。「龍」は前句「狼」と対偶。
【作者】大江朝綱(886~957)。
【補記】出典は御物小野道風筆屏風土代の「惜残春」(下記参照)。土御門院の作は「落花狼藉風狂後」の句題和歌。なお源氏物語・若菜上の柏木の詞「花乱りがはしく散るめりや」の典拠として『河海抄』は「落花狼藉風狂後」の句を挙げている。下に引用した具氏の歌は、直接的には源氏物語を意識したものかもしれない。
【影響を受けた和歌の例】
花さそふ木の下風の吹くままになほ時しらぬ雪ぞみだるる(土御門院『土御門院御集』)
咲きつづく梢を分きて吹く風にみだれがはしく花は散るめり(源具氏『建長八年百首歌合』)
【原詩全文】惜残春 大江朝綱
艷陽盡處幾相思 招客迎僧欲展眉 春入林歸猶晦迹 老尋人至詎成期 落花狼藉風狂後 啼鳥龍鐘雨打時 樹欲枝空鶯也老 此情須附一篇詩
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