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唐詩選卷二 代悲白頭翁(抄)2010年04月17日

白頭を悲しむ翁に代る(抄)  劉廷芝

古人無復洛城東  古人()た洛城の東に無し
今人還対落花風  今人()た対す落花の風
年年歳歳花相似  年々歳々花あひ似たり
歳歳年年人不同  歳々年々人同じからず

【通釈】洛陽の東に花を眺めた古人もすでに亡く
残された私たちは再びここに来て、花を散らす風に向かっている。
毎年毎年、美しい花は同じように咲くが
毎年毎年、花を見る人は変わってしまう。

【補記】「洛陽城東桃李花」に始まる劉廷芝「代悲白頭翁」より第九句から第十二句までを抄した。「()れ昔紅顔の美少年」など名句に富む一篇である。和漢朗詠集巻下「無常」に「年年歳歳花相似 歳歳年年人不同」を引く。

【作者】劉廷芝(りゅうていし)(651~679?)は穎川(えいせん)の人。別名、希夷。上元二年(675)の進士。この詩を知った舅の宋之問より、発表前に譲るよう強要されたが拒絶し、ために二十代の若さで暗殺されたとの伝がある。そのためかこの詩は宋之問の作とされることもあるらしい。

【影響を受けた和歌の例】
色も香もおなじ昔にさくらめど年ふる人ぞあらたまりける(紀友則『古今集』)
花の色は昔ながらに見し人の心のみこそうつろひにけれ(元良親王『後撰集』)
昔みし花のとしとし似たれども同じからぬを思ひしらなん(藤原公任『公任集』)
かへりこぬ昔を花にかこちてもあはれ幾世の春か経ぬらむ(西園寺実氏『続古今集』)

【原詩全文】
洛陽城東桃李花 飛來飛去落誰家 洛陽女兒好顔色 行逢落花長嘆息 今年花落顔色改 明年花開復誰在 已見松柏催爲薪 更聞桑田變成海 古人無復洛城東 今人還對落花風 年年歳歳花相似 歳歳年年人不同 寄言全盛紅顔子 應憐半死白頭翁 此翁白頭眞可憐 伊昔紅顔美少年 公子王孫芳樹下 清歌妙舞落花前 光祿池臺開錦繍 將軍樓閣畫神仙 一朝臥病無相識 三春行樂在誰邊 宛轉蛾眉能幾時 須臾鶴髪亂如絲 但看古來歌舞地 惟有黄昏鳥雀悲