白氏文集卷十三 春中與廬四周諒華陽觀同居 ― 2010年04月07日
性情懶慢好相親 性情
門巷蕭條稱作鄰
背燭共憐深夜月
蹋花同惜少年春 花を
杏壇住僻雖宜病
芸閣官微不救貧
文行如君尚憔悴
不知霄漢待何人 知らず
【通釈】性質が懶惰で君とはよく気が合い、
近所の路地は物寂しげなので、隣付き合いにぴったりだ。
灯火を背にして共に深夜の月を賞美し、
散った花を踏んで共に青春を愛惜した。
杏の花咲くこの館は僻遠の地にあり、療養には持って来いなのだが、
御書所に勤める君の官位は低く、貧窮を救うことは出来ない。
詩文も徳行も君のようにすぐれた人が、なお困窮しているとは。
朝廷は如何なる人材を待望しているというのか。
【語釈】◇門巷 家門と近所の路地の家並。<◇芸閣 御書所の唐名。朝廷所属の図書館。◇霄漢 大空。朝廷にたとえる。
【補記】友人の「盧四周諒」と華陽観に同居していた時の作。華陽観とは長安の道観(道士の住処)で、唐代宗の第五女華陽公主の旧宅。永貞元年(805)、白居易は友人たちと共ここに住んだ。和漢朗詠集巻上「春夜」に第三・四句が引かれている。また『采女』『西行桜』などの数多くの謡曲に第三・四句を踏まえた文句がある。下記の慈円・定家の歌はいずれもこの二句を句題とした作である。
【影響を受けた和歌の例】
あり明の月にそむくるともし火の影にうつろふ花を見るかな(慈円『拾玉集』)
そむけつる窓の灯ふかき夜のかすみにいづる二月の月(藤原定家『拾遺愚草員外』)
山の端の月待つ空のにほふより花にそむくる春のともしび(藤原定家『拾遺愚草』)
深き夜の花の木陰にそむけ置きてともにあはれむ春の灯(正徹『草根集』)
さても猶花にそむけぬ影なれやおのれかかぐる月のともしび(木下長嘯子『挙白集』)
灯火もそむけてやみん深き夜の窓の光は雪にまかせて(武者小路実陰『芳雲集』)
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