佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』大阪神戸附近2 水無瀬離宮~高槻 ― 2015年04月27日
水無瀬離宮の址
汽車山崎をいでて左方に叢林あり、これを後鳥羽上皇が離宮の址にして今水無瀬神宮あり。
見渡せば山もとかすむ水無瀬川夕べは秋と何おもひけむ
桜井の駅
水無瀬を過ぎて程なく左方鉄道に沿ひて楠公父子訣別の地あり。
桜井の実ある教にこずゑまでこゝろの花をちらさざりけり
君の為散れと教へておのれまづ嵐にむかふ桜井のさと
高槻
能因法師が旧棲の地古曾部はこの近くにあり。
我宿の梢の夏になる時は生駒の山ぞ見えずなりゆく
補録
水無瀬
水無瀬山木の葉あらはになるままに尾上の鐘の声ぞちかづく
水無瀬山我がふる里は荒れぬらむまがきは野らと人もかよはで
河上に里荒れ残る水無瀬山見しものとては月ぞすむらん
ありて行くみかさもいさや水無瀬川山もとかすむ春の明ぼの
いにしへにはやたちかへれ水無瀬川ふかき心のすゑの白浪
水無瀬山玉をみがきし跡とめて忘れぬ郷と月やすむらん
わきてやはこの里人もみなせ川山もとかすむ花の下道
水無瀬川遠きむかしの面影も立つや霞にくるる山もと
水無瀬川かすみの水脈のあらはれて一筋深き遠の山もと
桜井
秋、さくらゐの里といふところにて、もみぢをみて
秋風の吹くに散りかふもみぢ葉を花とやおもふ桜井のさと
見わたせば春のけしきに成りにけり霞たなびく桜井の里
小芹つむ沢のこほりのひま絶えて春めきそむる桜井の里
この頃は待つと惜しむと往き来にも花をぞかたる桜井の里
是やこのさらぬ別れにますらをのかへり見しけむ桜井の里
子わかれの松のしづくに袖ぬれて昔をしのぶさくらゐの里
高槻
津国古曾部といふ所にまかりけるに、能因法しの旧跡、見しにもあらずなりて、あら田にすきかへしなどせしを見て
それをだに田にほり残せ敷島の道しある世の跡かたに見む
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