佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』九州17 生の松原 ― 2017年03月10日
生の松原と元寇防塁
補録
生の松原
筑前国の歌枕。福岡市西区の姪浜から西に延びる海岸の松林。新羅遠征の際、神功皇后が無事を祈ってこの地に松の枝を挿し、その枝が生い育って林になったと伝わる(筑前国風土記)。松原は今も残り、また元寇防塁の遺跡がある。「いき」に「生き」「行き」の意を掛け、筑紫へ下る人への餞別の歌に詠まれるなどした。
老いぬれどなほ行先ぞ祈らるる千歳まつにもいきの松原
筑紫へまかりける人のもとにいひつかはしける
昔見しいきの松原こと問はば忘れぬ人もありとこたへよ
一条院御時、大弐佐理筑紫にはべりけるに、御手本かきに下しつかはしたりければ、おもふ心かきて奉らんとて、かきつくべき歌とてよませ侍りけるによめる
都へといきの松原いきかへり君が千歳にあはんとぞおもふ
音にきくいきの松原見つるより物思ひもなき心地こそすれ
大宰帥隆家くだりけるに、扇たまふとて
すずしさはいきの松原まさるともそふる扇の風な忘れそ
恋ひ死なで心づくしに今までもたのむればこそ生の松原
涼しさを風のたよりにこととはむ今いくかあらばいきの松原
最近のコメント