千家詩卷三 淸明2010年04月01日

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清明  杜牧

淸明時節雨紛紛  清明の時節 雨紛紛(ふんぷん)
路上行人欲斷魂  路上の行人(かうじん) (こん)()たんとす
借問酒家何處有  借問(しやくもん)酒家(しゆか)(いづ)れの(ところ)にか有る
牧童遙指杏花村  牧童(ぼくどう)遥かに指さす 杏花村(きやうくわそん)

【通釈】清明の時節、雨がしきりと降り、
路上の旅人は、魂も消え入るばかり。
居酒屋はどこにあるかと尋ねると、
牛飼いの少年は遥か遠く、杏の咲く村を指さす。

【語釈】◇淸明 二十四節気の一つ、清明節。春分後十五日目。太陽暦では四月五日頃にあたる。この日人々は墓参りや遊山をして過ごした。◇雨紛紛 雨がしきりと降る。「紛紛」は多く盛んなさま。清明の頃は春雨のよく降る候で、これを「杏花雨(きょうかう)」と呼ぶ。◇行人 旅人。作者自身を指す。◇杏花村 杏の花の咲く村。固有名詞と解する説もあり、貴池県城(安徽省)の西にあるという(渡部英喜『漢詩歳時記』)。

【補記】『千家詩』は南宋の劉克莊(1187~1269)の撰した詞華集。五言絶句・五言律詩・七言絶句・七言律詩の四巻からなる。

【作者】杜牧(803~853)は晩唐の詩人。京兆万年(陝西省西安市)の人。太和二年(828)の進士。各地の刺史を歴任し、中書舎人に至る。杜甫を「老杜」と言うのに対し、「小杜」と呼ばれる。豪放・洒脱な詩を得意とした。『樊川(はんせん)詩集』八巻がある(早稲田大学古典籍総合データベースで閲覽可)。

【影響を受けた和歌の例】
はつせのや里のうなゐに宿とへば霞める梅の立枝をぞさす(契沖『漫吟集類題』)

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