唐詩選卷六 勧酒 ― 2010年04月02日
酒を勧む
勧君金屈巵 君に勧む
滿酌不須辭 満酌 辞するを
花發多風雨 花
人生足別離 人生別離
【通釈】略。訳詩は【参考】参照。
【語釈】◇金屈巵 黄金製の酒器。「屈」は曲がっている様、「巵」は盃。◇不須辭 辞する必要はない。遠慮には及ばない。◇足別離 別離に満ちている。「別離
【補記】友人との別離に際し、別れの盃を勧めて作った詩。以下の和歌は全て『頓阿句題百首』所収の「花発風雨多」を句題とする和歌。『頓阿句題百首』は貞治四年(1365)閏九月五日に周嗣が編集・書写したものという(新編国歌大観解題)。
【作者】于武陵は杜曲(長安の南)の人。大中年間(西暦855年頃)進士となるが、官僚の道を捨てて放浪生活を送る。『于武陵集』一巻を残す。
【影響を受けた和歌の例】
世の中はかくこそありけれ花盛り山風吹きて春雨ぞふる(頓阿『頓阿句題百首』)
いかなれば嵐も雨もあやにくにいくかもあらぬ花にぞふらん(良守上人)
花ざかりしづ心なき山風にまづさそはれて春雨ぞふる(僧都良春)
つらきかな雲とみえつつ咲く花は雨と風とのやどりなりけり(頓宗)
ふる雨に猶やしほれんさくら花嵐におほふ袖はありとも(周嗣)
【参考】井伏鱒二の訳詩は以下の通り。
コノサカヅキヲ受ケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ
コメント
_ ぱぐ ― 2010年04月02日 21時46分
_ 水垣 ― 2010年04月03日 11時33分
昨日はこちらも雨交じりの嵐が一日吹き荒れました。まさに「花発けば風雨多し」で、この詩を思い出し、掲載することにしました。
さいわい桜はほとんど散らなかったようです。いくら風が強くても、時が来なければ花は散らないものなのですね。
例に挙げた和歌はいずれも「花発けば風雨多し」を句題とした作です。お選びの一首は「あやにくに」の一語で原詩の味わいを巧く出していますね。
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井伏鱒二の訳詩も含め、有名な漢詩ですね。
今日は雨風が強くて、まさにこんな感じで桜の木が揺れていました。
わたしが好きなのはこれ↓かなあ。
やまとことばをうまく使っていると思いました。
>いかなれば嵐も雨もあやにくにいくかもあらぬ花にぞふらん(良守上人)