佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』京都附近2 東山~岡崎 ― 2015年03月02日
東山
京都の東方、山城近江の国境をなす連峯。
粟田山松の葉うづむ白雲のはれぬあさけになくほとゝぎす
埋火の外に心はなけれどもむかへば見ゆるしらとりの山
音羽山雪にのぼりてみわたせば九重のそらに花ぞふりしく
ひがし山祇園清水しろがねの箔をちらして春の雪ふる
清水寺
東山にあり。
京の子が日傘たたんでしやんなりと青葉うつくし清水のぼる
初旅の京のみやげと陶器の塔など買ひぬ清水坂に
祇園
京都東部、狭斜の地。
行く春の祇園はかなし舞姫が稽古がへりのうしろ姿も
賀茂川をゆく水よりもはかなしやその日その日の舞姫の恋
女たち小走りにゆく夜の霧に行燈の灯が紅うにじめり
ほとゝぎす京は八坂の御塔を南に過ぎぬありあけの月
京言葉ふさはしこよひ宵宮の祇園ばやしのながれくる町
春の夜はつなぎ団子の提燈のつゞく祇園のゆきずりもよし
祇園町をどりのはてのちかづけば提燈の灯もはかなかりけり
黒谷
京都市東部にあり。金戒光明寺といふ、浄土宗の巨刹。
雨あがり桐の花ちる黒谷のみ寺しづけきはつ蝉のこゑ
岡崎
京都東方にあり。今は市に入りて京都帝国大学など建てられ、閑静の趣は減じたり。
梟のこゑをしるべに帰るかな夕べをぐらきをかざきの里
冬畑の大根のくきに霜さえて朝戸出さむしをかざきのさと
をかざきの月見にきませ都人かどの畑いも煮てまつりなむ
岡崎に友を訪ひての帰るさの時雨の雨もなつかしきかな
補録
東山
東山に百寺拝み侍りけるに、時雨のしければよめる
もろともに山めぐりする時雨かなふるにかひなき身とはしらずや
東山のぼりも果てずまづ見れば都のしぐれ鳥羽にすぎゆく
朝日さすひむがし山の面影も遥かに霞む春は来にけり
清水寺
照る月のかげにてみれば山ざくら枝うごくなり今かちるらむ
祇園
清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき
人にそひて今日京の子の歌をきく祇園清水春の山まろき
木屋街は火かげ祇園は花のかげ小雨に暮るゝ京やはらかき
かにかくに祇園はこひし寐るときも枕の下を水のながるる
岡崎
妹と出でて若菜摘みにし岡崎のかきね恋しき春雨ぞふる

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