佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』伊勢方面3 津~山室山 ― 2015年03月15日
(写真は松阪市の本居宣長旧宅。Railstation.netより転載)
藤堂氏の旧城下、伊勢湾に臨めり。 にえ崎の浦の汐風さえさえて朝霜白き安濃の板橋 安濃の津をさしてまともにくる船の贄の岬に真帆の綱解く 津附近の海岸。 沖つ波たちゐにつれて幾たびか阿漕がうらにふるしぐれ哉 本居宣長の住りし地。翁の旧棲鈴屋は今松坂公園にあり。 小草もゆる下樋小川の堤道昔ながらの川上の山 ところせきここに筆とり畏こきや古ことをしも明らめましき 松坂の西南一里三十町にして山室山妙楽寺あり。その上に本居宣長の墓あり。 山室に千年の春の宿しめて風に知られぬ花をこそ見め なきがらはいづくの土になりぬとも魂は翁のもとにゆかなむ 宿しめて風にしられぬ花を今も見つゝますらむ山むろの山 おくれても生れし我か同じ世にあらば履をもとらまし翁に 雲井よりうつる日影に山室のさくらの紅葉てりまさりつつ 塩木つむ阿漕が浦のあまの袖くれもほしあへず秋の夕暮 忘れずよ旅をかさねて塩木つむあこぎが浦になれし月影 (水垣注:松阪は古くは松坂と書くことが多かった。) 勢州松坂の閭亭に古松有り、いつよりのならはしにか、とみ松といふをつたへ聞きて 千とせにもむべとみ草の名をかりて花に咲くべき里の松かげ よいの森木高き影に里人の家居もしげく今ぞ栄ゆく津
阿漕が浦
松坂
山室山
補録
阿漕が浦
松坂
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